バルザック生誕200年記念をして
1999年に新たな翻訳での「人間喜劇」の刊行、そのシリーズの13巻がこの話。
なるほど、こういう訳なら
「ゴリオ爺さん」も鹿島茂の訳でもう一度読んでみよう、と思う。
(過去記事のバルザック「ゴリオ爺さん」→http://s-tusin.blog.so-net.ne.jp/2007-09-12)
バルザックの小説は、黒澤明の「生きる」とか「どん底」を思い出してしまう。
主役ではなく脇役やちょい役級てせ、その人間観察の鋭さにある。
たぶん黒澤自身が好きな作家で存分に読み込んでいるからに違いない。
また、映画の話しになる。
この哀れな目利きコレクターのポンスの話しを読み終わったら、
偶然にもあのバルドーが良家の作家の卵の役の、
「裸で御免なさい」(1956年マルク・アレグレ監督)を見た。
この世間知らずの娘が妙な風俗小説を出版し、将軍の父親の逆鱗に触れてしまい、家出。
パリで画家として大成したという兄を頼るが、住まいがバルザック博物館なのだ。
ただの管理人なんだけど、妹の方はそんなことは知らず…
同業の小説家のくせに、バルザックがだれかもおそらく知ってはいない。
お金に困り、「谷間の百合」初版本のサイン付きをこっそり古本屋に売り払うことから
後にもめ事に成る。
買い戻さないと刑務所行きで、素人スリッパーコンテストに応募すると言う
いかにもフランス的な映画なのだ。
コチラはフランスに行ったことがないからわからぬが、
どうも本物の博物館で撮影しているようだ。
娘の兄が、観光客を案内するが、禁煙だと言いながら口からタバコを放さず、
やたらと触りたがる御婦人客がいたりと…
ちょっと本筋とは違うフランス人の感覚に感心してしまった。
この脚本を例の女たらしで夫だったのロジェ・ヴァディムが担当しているが、
こちらは黒澤明と違い、バルザックは読んでないじゃないかと思う。