2010年4月4日日曜日

バリッコ版の「イリアス」

盲目の語り手ホメロスの「イリアス」
をアレッサンドロ・バリッコがリライトした。

まず、ギリシャ神話にあるゼウスたち神が
人間に介入するパートを削る。

そして、重複を縮め、
この省略されているのは、
こうであろうなという追加がされている。

そのため読みやすくなっている。
どことなく、ブラット・ピットが演じたアキレウスの「トロイ」
が思い出される。

しかしあのハリウッド映画にないのは、
集団での戦闘がどのようなスタイルだったのか、
の殺戮シーンに仮説がないことだ。

なるほど、それはバリッコ版でも、
ほぼ十年の間戦闘の日々を繰り返し、
日々は、ひょっとしたらと、幾つもの想像が入り込む。

倒した名のある兵士たちは、武器をはぎ取られ敵側へのみせしめとなる。
いかに、神の庇護受けているか、無数の兵士を鼓舞する。
だいたいそうしないと、
どこでどうなっているのか
戦場の全貌はまるっきりわからないじゃないかと思う。

たしかにホメロスの煉瓦で積み上げたが、
戦争の現代的な問いかけになっている。

2010年4月3日土曜日

デ・ラ・メア物語集

「九つの銅貨」という物語集を読んで以来、
作者のウォーター・デ・ラ・メアは感心する作家の一人だ。

たまたま児童書にシリーズとして
三冊刊行されているのを知った。

読んでみたが、違和感。
訳文だから仕方がないが、たぶん
少し違うんじゃないか、ということだけはわかる。

この作家は一つの文章と一つの文章の間の
行間に何かを出現させようとすると思う。

その無精という柱、のある者に寄って
間のない部分を感じさせてくれる。

まずそういうことだと思って
訳してもらわないと、ひどく読みにくい。

たぶん子供向けの、
まあ、それは「九つの銅貨」もそれだから
いいんだけど、それも声に出して読ませるテキストの
ようだ。

そのあたりのもどかしさがある。