2010年12月21日火曜日

村上龍「歌うクジラ」







この作家もデビューからそれほど離れずに読んでいる。


本の見出しにある、グレゴリオ聖歌を歌うザトウクジラの発見と、少年の冒険の旅、
という言葉で、勝手に
村上龍版の「海辺カフカ」とも想像。

読み始めると、冒頭は山上たつひこの「光る風」、
それに続く展開に、大友克洋の「アキラ」が重なってきました。

性と生を管理する管理社会の未来を描いた反ユートピアの世界。
そこをめぐる少年の話は、
どうも「キャッチャー・イン・ザ・ライ」を
思い出してしまいました。


個人的には、
「コインロッカー・ベイビーズ」がやはり毒があっていいです。

2010年12月3日金曜日

ヘルマン・ヘッセ「デミアン」

読むのははじめての大作家だが、とてもおもしろかった。

まるで
萩尾望都の「トーマの心臓」ではないか…
と思うのも妙かしら…

とくに出だしが上手い。

一歩先んじている不良のクローマーがまるで手下を使うように
川の屑を探すあたりや、この仲間同士での自慢でのリンゴを盗んだと話をでっち上げてしまうあたりが見事。
悪事の自慢大会で
一堂の期待に酔いしれ自らのウソにうっかりと溺れてしまうシンクレール。
それをずる賢いクローマーに本当のことだと誓い、抜き差しならない窮地に陥る。


これによって脅かされ続ける
主人公のシンクレールの苦痛が始まる。

これを救うデミアンとの話を読むうちに
かっての中学の頃を思い出してしまうが、
考え見たら、
そんな記憶が蘇がえらぬのなら名作とは呼べないのかもしれない。