2011年7月30日土曜日

「芸術闘争論」村上隆


読んでいて、同意も意義もある。

(当たり前か…)


ピカソ以降の現代アートの流れのひとつの仮説が提示されているが、その解釈がおもしろい。

かえって批評家ではこういうおもしろい文脈ができないのかもしれぬ。

しかし一方で西欧の文脈(ルール)にも違和感を覚える。


たしかにベニスビエンナーレを見ても「なんだこれは?」

時代にもなににもはまらないものの方が多い。

推定すると、それがあって3割の戦いが現代美術なのだろう。


学校について見解も刺激的だった。

たしかに、あれは生徒をダメにする。


しかしお金を払うとお客になるという傾向は奇怪至極。



日本人のゴッホ好きが貧乏に由来し、ピカソが揶揄されるイメージは

極東の島国の特殊な感覚だ。


著者のやっていることは、とても意識的。

そういえば一度フランクフルトの乗り継ぎ待ちで見かけたが、

意識的で感の強いタイプのように伺えた。


ナカナカ刺激になった。


2011年7月4日月曜日

「あら皮-欲望の哲学」バルザック


解説によれば、それまで無名だったバルザックを文壇に知らしめた成功作とか。

珍しいことに、この小説は寓話。

落ちぶれた貴族階級に属する貧しい青年が、賭博で最後の蓄えをすってしまう。
絶望し、セーヌ川に投身自殺しようと思った時に、
偶然、川岸の骨董屋に入り、奇異な獣の皮に魅入られる。

これまた謎めいた主人が、その皮には魔術的な力があり、
所有する者の願いを叶えるという。

ただし、叶うたびに皮が縮み、その大きさが余命を警告する。

昔よくあったあの話である。

バルザックが「猿の手」みたいなタイプのアイディアを使っていたとは知らなかった。
だってこの文豪、
「あら皮」的な人物をストーリーの中に組み込むと思っていたからだ。

そんな点でも一見の価値があるかもしれぬ。