久しぶりに「暗夜行路」を再読した。
年末、市立大学イベントで久しぶりに手に取る気になった。
そのテーマが尾道を小説で読む。
去年読んだ上田秋成「雨月物語」を古語の現代翻訳版もあわせ読んだが、
その著者、円城塔も参加していた。もちろんそれが目当てではない。
この頃は現代小説を読んでいないし、なにかきっかけでもと考えていた。
興味深く聞くが、林芙美子など、尾道を素材にした作家が多いのはわかる。
だが、肝心の志賀直哉がない。
どうやら今生きている作家と文豪志賀とは縁が切れているらしい…
彼は大正時代にここに住み、「清兵衛と瓢箪」の着想となる話を聞く。
その頃の尾道の店にはひょうたんが流行し、たくさんあったらしい。
(…今でも私のいく駅近くの店内には立派な絵柄付きの瓢箪が飾ってある。
まさか志賀当時のものとは無関係だろうが… )
しかし。いつでも流行と言うのは奇妙なものだ。
白樺派のおぼっちゃん、志賀は今記念館となっている家を借りるが、ひどい寒がり。
尾道の寒さが苦手らしくで七輪やストーブを使うが、料金が半端じゃなく料理屋並。
かなりの引越魔で、村上春樹も負けるほどで各地に住んでは小説を描いている。
この志賀先生、同郷の石巻生まれ。
故にどの文豪より一目置くのだが、読んだ人は判るがうまいけど親しみのない文章。
どっかと言えばクール。
そう言えば、小津が敬愛している。
小津映画の原作は里見弴とかで志賀のはないが、
いつか「暗夜行路」を映画化したかったらしいと、どこかで読んだ。
あの名匠伊丹万作の「赤西蠣太」くらい。
原作と違うのに戸惑った作者は最初は気に入らず、後に見直してから気に入ったそうだ。確かにこの人のは、そのまま映画の原作になりそうな小説がない。
さて。
これが気になり、調べようと全集にある日記を読んでみた。
志賀の全集には、日記、手帳には博物館でのスケッチがあるが、なかなかうまい。
さすが美術コレクター、座右宝のひとである。
全集にも、ちと驚く。全集だからずらっとあるが、なんと小説は実に少ない。
長編は「暗夜行路」のみ。
草稿もはいっているが、ほとんどどこが違うのか…、
タイトルが「大津順吉」とあるが内容は時任健作の習作。
この文豪が散々逡巡した軌跡が伺える。
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