2010年10月23日土曜日

「夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです」

村上春樹インタビュー集。

ネットでの公開質問に答えたものを編集したものを
読んでも感心するけど、
小説にたいする真摯な姿勢と、野心の大きさに
改めて感心する。

小説というか物語を定義し、
きちんとした仮説をもっていることだ。


ほぼデビュー作から同時時代的に読んできた
のがこの人。
やはり「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」を
読んだ時に、
「作家になったんだな」と思ったことを記憶している。

当時芥川賞の小説を読んでもよくわからなかった。
村上龍のだって「コインロッカーペイビーズ」で
やはり作家になったと思った。

しかしよく考えると、逆に
他の、日本の業界にいる作家の人たちって
いったいなんなのだろうと思ってしまう。


テレビや映画の原作を与える役割なのか…

2010年10月22日金曜日

「夜想曲集」ガズオ・イシグロ

音楽にまつわる5つの短編集。

長編しか知らない作家だが、なるほどこういう短編を書くのか。
短編になると、印象がずいぶん違って感じられる。

お互いの背景や価値観の違い、
その会話が気持ちにまでとどかず
交じらない感じがとても現実感がある。

ドラマでは割合わかりやすく流れるが、
日常案外そうじゃない、そういところが印象に残る。

2010年10月16日土曜日

「地上のみ知らぬ少年」ル・クレジオ


前回のスタインベックから続いてノーベル賞作家の小説だ。
それにしてもこのノーベル賞、なぜか受賞作の小説が
よくない。いいのにあたっていない気がする。

このクレジオのもはじめて読む。

この本はどんな風に読んだらいいのだろう?

まずもって「ダ・ヴィチ・コード」みたいな小説じゃない。
フランス人の作家だ。
フランスと言えば、マルグリット・デュラスもいれば
「大人は判ってくれない」のある国だ。

小説と映画には特に独自のテイストがあり、
まずもってエンターティメントのひねりも意味も異なるお国柄。

ちょっとサンテグジュペリの王子様がこの地上にやってきたような別バージョンのようでもある。
その日の、その時に来た意識の海に浮かんだ言葉をすくいとっている。
断片的で哲学的、
そういう本はありそうだが、350ページの本なのだ。


どのジャンルにも属さない物語がこうして出版されるのがフランスだと思う。

読んで行くはじから消えて行くような文章だ。

「人間は言葉のせいでこの世に生きるもののなかで最も孤立した存在になってしまった。
沈黙と手を切ってしまったからだ。」