松田優作主演、森田芳光監督のを観ていたせいで未読だった。
あらためて読んで、新鮮。
そう、映画とは…、当然のこと違う。
森田監督は映像で伝えようとしたが、
漱石の文章にはいつも執筆された時代の匂いがある。
それが面白い。
今でこそ「恋愛」は、ある人にはあるし、ない人にも理解を得るが、
これも輸入品の一部だ。
近いものはあったにせよ。
日本にはなかった。
友人の平岡や代助の父や兄がフツーなのだ。
それでは恋愛は描けぬ。
そこでそのなきものを成立させる為に、長井代助という
いないキャラを拵え上げている。
その為の親に寄生し屁理屈をこねる高等遊民ばかりが際立つようだが、
今更読むと、冷ややかな傍観的観察者から明治期社会を眺める。
富国強兵と言いながら、経済も政治もアベノミクスみたいに実態は乏しく貧しい。
会社員は丁稚と変わらず、金を稼ぐ手段ではない。
この「経済」すらも輸入品なのだ。
政治家も資本家の贈賄、日糖事件に代助の兄が絡む。
この兄が接待やら根回しで多忙なのは今と変わらない。
しかもその事件、
地方銀行でしくじり上京して経済の新聞記者に就職する友人
平岡が借りた金もあり忖度し、記事にせずにいる。
ジャーナリズムの噂と忖度も昨今に通じる。
そう言えば、新聞も輸入品か…、瓦版は
町レベルのメディか…
その上京した平岡の越す家だ。
あまりにも建材やら間取りの安っぽさへの記述もあり、
不動産屋の悪知恵算段も描かれている。
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