2010年7月23日金曜日

「ワイルダーの自作自伝」

映画監督ビリー・ワイルダーは、作品をスクリーンで見るようになった時にはすでに名匠だった。
それも年齢とともに下り坂にはいっていた。
同時代的に見たのは、「シャーロック・ホームズの冒険」で
あまりおもしろいとは想わなかった。

それ以上にテレビで見た「サンセット大通り」「アパートの鍵かします」
「第十七捕虜収容所」「お熱いのが好き」などがよかった。
そういう点では、ヒッチコックも同じだ。

しかしこのインタビュー自伝は、おもしろい。

ナチスの手から逃げ延び、なんとかハリウッドで仕事を求める。
映画業界は今と違ってさらに興行的な山師の集団。

ワイルダーの皮肉たっぷりのまなざしは時に、自分の映画にも向けられる。
この人は、社会を冷ややかに愉快に見る力がある。
だからそこ、あのような名作を創ることができた。

それにしてもユニークだと想ったが、彼はピカソやマリーニなど近代の美術のコレクターでもある。
「近代」というのも変だけど、その当時は皆まだ生きていた。
その目利きの彼がオークションで買った作品を売る。
きっかけが、収集仲間が死ぬと、その未亡人や再婚した夫が嬉々として売るから
自分もその訳が知りたくてやってみたという。

これを元手に若手の現代美術を買うようになった。

その後、長生きしたワイルダーは、同業者のキャメロン・クロウとも対談しているのだが、
これももう一度読み返そうと想う。

ビリーワイルダーの人生
と、この語り口は自身の幾つかの名作と同じくらい、おもしろい。

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