落日のスペインの宮廷画家ベラスケスの傑作、
「宮廷の侍女たち」とか「女官たち」との邦題のついた絵画。
絵の中心、マルガリータ王女の精錬な美しさに
オーギュスト・ルノワールは心を奪われたという。
なるほど確かに後のノルワールの絵には
このような少女の絵が何度も登場する。
おそらくこの人物画だけでも見事だ。
おなじベラスケスの肖像画にはない
今の時間を閉じ込めた勢いが感じられる。
しかし
宮廷画家は何の絵を描いているのか?
これはいつつみても不思議な絵だ。
常々、二次元の世界には、
三次元の世界ではない本質的な魅力があるはずだ。
つまり虚構を含めた絵作りこそ面白い。
二つの異なった空間を構成したり、
過去現在未来の時間を同一画面に表現したり
というが
絵画の本質に迫る面白さだと信じる。
それこそが絵画の世界だろう。
「ラス・メニーナス」にはそれがある。
この絵は見る以上に、絵の自分の視線に見られる絵だ。
この絵に登場する人物をのちに調べた画家によれば、
侏儒マリバルボラの背後、
影のような人物。
ベラスケスの胸の紅い十字。
絵の完成時には、この紋章の示すサンティアゴ騎士団にはまだなっていなかったという。
この小説、「ベラスケスの十字の謎」は、
その謎から啓示を受けた話だ。
よめば、もう一度この絵を見たくなるに違いない。
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