2010年1月16日土曜日

アゴタ・クリストフ「悪童日記」、三部作。


なるほど、「悪童日記」は新鮮な面白さだ。
しかし、
その続編の、「ふたりの証拠」も、
その後の「第三の嘘」。

続編でありながら、全く異なった更新の仕方をされて行く。

ふつう、続編は続くものだがそうだはない。
そうではないところに、不思議な魅力がある。

作者は、この物語を描かなければならない体験をする。
国境の近くの町が、ドイツ軍に支配され、それを追い出した
ソビエトが居座る。

そのためか、「英国王給仕人に乾杯!」を思い出し、
中欧の、よく知らない光景が浮かんでくる。

世界には実に才能ある作家がいるものだ。

「秘密の花園」

バーネットの児童文学は、映画でも見た。
そのはずなのに、どんな話だったか上手く思い出せない。

この年になったはじめて原作を手に取った。
たまたまその機会があったのだ。

なるほどこういう話だったのか……

これはコッポラでは無理かもしないと思う。

スウェーデンの監督、
「マイライフ・アズ・ア・ドッグ」のラッセ・ハルストレム
の仕事だ。

彼なら、インドからほったらかしに育てられた女の子も
陽のあたらないだだっ広い館に閉じ込められる少年も
上手に演出しそうに思える。

2010年1月1日金曜日

第一級の植民地文学-「太平洋の防波堤」



マルグリット・デュラスの仏領インドシナを舞台にした
この体験的な物語。
「ラ・マン」を読めば十分かと思っていたら、
全く違う話に驚く。似ているが違う話だ。
それにこれは植民地文学だ。
デュラスの家族、取り分け母親は、植民地に置いて白人で普通なら加害者だが、
政府の小役人からだまされて、塩が押し寄せてくる耕作地を買ってしまう。
そのことで、「被害者」になった。いや、とても微妙な位置だ。
でもそのことが当時の南ベトナムの支配された現地の人々になにやら
近い視点を向ける。

個人的に南アフリカで感じたこととよく似ている。
そのことで自分が、ひどく白人化した現代人だと思う。
既にそのことで、加害者で、被害者だ。
なんとも切ない立場だ。それだけアフリカは野生が強い。
つまり弱肉強食で暴力も悪意も温暖な日本とは違う意味が含まれている気がする。
それは文明人のやるせなさ、空虚に似ている。
この小説、もちろん物語の背景だが
植民地がとても良く描けている。