マルグリット・デュラスの仏領インドシナを舞台にした
この体験的な物語。
「ラ・マン」を読めば十分かと思っていたら、
全く違う話に驚く。似ているが違う話だ。
それにこれは植民地文学だ。
デュラスの家族、取り分け母親は、植民地に置いて白人で普通なら加害者だが、
政府の小役人からだまされて、塩が押し寄せてくる耕作地を買ってしまう。
そのことで、「被害者」になった。いや、とても微妙な位置だ。
でもそのことが当時の南ベトナムの支配された現地の人々になにやら
近い視点を向ける。
個人的に南アフリカで感じたこととよく似ている。
そのことで自分が、ひどく白人化した現代人だと思う。
既にそのことで、加害者で、被害者だ。
なんとも切ない立場だ。それだけアフリカは野生が強い。
つまり弱肉強食で暴力も悪意も温暖な日本とは違う意味が含まれている気がする。
それは文明人のやるせなさ、空虚に似ている。
この小説、もちろん物語の背景だが
植民地がとても良く描けている。
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