これは少し不思議な本だ。
いや、装丁のことではない。装丁はとてもいい。
特に挿絵を担当しているが、版画家の駒井哲郎。
作者、W・H・ハドソンのことだ。
内容は、
ひとりの、選ばれたような少年が
大自然の大地に誘われて行く物語だ。
たぶん作者も知らないインスピレーションに
導かれて描ききった物語なのだと記されたとおり
なのだろう。
その不思議な感覚が面白い。
もちろん、作家自身、無意識で知らずに描くことはなんら
珍しいことではない。
ただその分量と、おそらく一気に書き上げたスピード感、
それがこの物語とシンクロしていることがわかる。
作者ハドソンがその勢いに振り落とされぬように
描ききっている点がなによりも素晴らしい。
あらめてこういうことがあるんだと感心する。
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