2012年2月26日日曜日

「母をお願い」申京淑

ひょっとしたら、
憎しみというのは、愛情よりも強い絆では…

韓国の愛憎カルチャー、憎しみや恨みは、うすっぺらな愛情よりも強烈だ。
そう、まるであの唐辛子のよう。

この小説はそんな血の濃さを感じさせる。

この物語は、
子供たちが住むソウルへやって来た母が雑踏ではぐれ迷子、
探しはじめ、三日めからはじまる。

その後も一向に消息が掴めない。
だが、捜索ものではない。

作家となった長女、大手のゼネコンに勤務する長男、
彼らの視点でオンマの人生が語られる。

オンマを現す「牛のような眼」も印象的だ。

2012年2月24日金曜日

「宮台教授の就職原論」宮台真司

就職を目指す学生ではないが、おもしろく読めた。

それにしてもやはり日本は不思議な国だ。

卒業するまで就活禁止した…いや、
まてよ。

あの学生たちがそんなに働きたいと考えているとは思えない。

そうだな。
働きたいのと、就職したいとはまったく別のものなのだ。



2012年1月27日金曜日

「オードリー・ヘプバーンとティファニーで朝食を」

原題が「FIFTH AVENUE,5A.M.」

この大女優が創ったホリー・ゴライトリーという女性像について
のルポのような本。

カポーティのことや衣装担当のイーデス・ヘッドなどを登場させ、
どのようにこの作品が出来たかのかを描いている。
ただし、ドキュメンタリー路線よりも
    テレビ番組のようなスタイルだ。


冒頭ティファニーの前でかじりつく
デニシュ・ペストリーが大嫌いだったというのがおかしい。
コーンにのっかったアイスクリームでは?
という提案を
ここは朝食なのだという監督のブレーク・エドワーズ。

それにしても映画というのは不思議だ。
これがエリザベス・テイラーでも、イーデス・ヘッドの衣装でも
この作品は上手く行かなかっただろう。

1960年オードリーというスターの新たなイメージに皆が魅了されたのだ。
今見ても十分楽しめるのは、名画の証だろう。

2012年1月18日水曜日

「小澤征爾さんと音楽について話をする」

指揮者、小澤征爾と小説家、村上春樹の音楽対談。

コンサートにはたまにしか行かないし、クラッシックもそれほど聞いている訳ではないので、
どうかなと思ったが、おもしろかった。

とにかく二人の対談を読んでいくにつれて、音楽がわかったような気になる。
ここまで「わかった」ようにさせてくれる本があるんだろうか?

素人と言いながら村上の愛好家ぶりはなかなかすごい。
異常だ。
だから、小澤との間で立ち上がってくる世界がある。

五線譜の記号、楽譜を読み込む小澤は、マーラーの曲を例えたりしない。

この楽譜を読むという行為がどんなものなのか、
さっぱり想像できないが、純粋に音楽というものがあるのかもしれぬと思えた。


2012年1月5日木曜日

「KUBRICK」ミシェル・シマン


ずいぶん前の本だけど、「猿の惑星・創世記」を見たら、
読んでみようと思った。
あの映画は、ティム・バートンが制作した新作続編とは違う。
まるで「2001年宇宙の旅」のもう一つの続編のよう。
しかしこの本のはひどい。訳が良くないし、文字が小さい。
どうしてこのサイズで、この級数なんだ。読むのが辛く、意味不明だ。
だけど、写真のレイアウトがいい。
もともと、相手は映画なのだ。
その感覚を文字だけで表現しようするのではムリがある。
内容だけなら、浜野安樹が監修した方が読みやすく、よくかけている。

2011年12月23日金曜日

「一〇〇年前の女の子」船曵由美

この本は
   どのようなジャンルに入れるべきなんだろう…

1909年に生まれた自分の母親の生涯を描いてはいるが、
宮尾登美子あたりのようなドラマチックさはない。

例えれば
    映画ではなくドキュメンタリーに近いと言えるだろう。

ストーリーよりもその当時の習慣や生活のあり方が
生き生きとした物語になっている。

お年寄りを前に、語ってもらっている
そんな感覚の距離感がとてもいい。

誰かが言っていたが、80歳くらいになると
それまで遠い歴史だと感じていた明治が体験などしてないはずなのに
近くなる気がする、
         90歳くらいなったら江戸なんか
          もうすぐ目の前だ、とか。

この話に頷けたのは、この私の身にもそうした実感があるからだ。
つまり、

未来よりも過去の方が縁が近い訳である。

これはいままで考えもしなかったことだ。

高齢大国なら、こういうのは新しいジャンルで
それならではの読み方なのかもしれない。

2011年12月14日水曜日

「うみべのまち」佐々木マキ自選マンガ集

最近は書店をのぞくと、懐かしいと感じる
作家の本が新たに出版されている。

その昔、友達が手塚治虫の過去の作品を体験するには
新刊ではなく、色が変わったざらざらの方がいいという
ことを言ったが、

新刊には新刊の、新しい紙の良さがあるものだと認識した。

この本のあとがきに、「マンガの神様」の逆鱗に触れた、とあるが、
その気持ちはわかる気がする。

しかし本当に魅力的な流れ出てくるような絵だ。
佐々木マキは、キース・ヘリングのようだ。

日本の漫画の奥行きの広さに感心する。